坂道では自転車を降りて

「なんで叱られたか聞いたのか?」
「俺は聞いてないけど。自分が悪かったんだって言ってた。そうなの?」
「そうだな。」
「どんな叱り方したんだよ。あんな顔させて。」
「。。。。。」
「お前等、最近ゴタゴタ続きなんだって?。大野さんの身が持たないから、なんとかしてやれって、女子が騒いでて。このままだと、彼女、高校最後の夏休みなのに、お前とも会わない、友達とも一度も出掛けないまま、終わっちゃうぞ。」
「そんなこと俺に言われても。」
 受験生なんだからそれで良いじゃないか。とも思ったけど、勉強にも身が入っていないかもしれないな。そう思ったとき、顧問の言葉が頭の中に鮮明に蘇った。『肝心な時に勉強に集中できなくなって転落して行く生徒を何人も見てきた。もう少し、気遣ってやれないか?』

「とりあえず、お前も学校来てみたら?少人数教室のほうでやってるんだ。北向きだからエアコン無くても結構涼しいぜ。」
「うーん。」
 それはそうかもしれないが、そんなことしたら、俺はますます彼女の邪魔をしてしまうんじゃないだろうか。

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