坂道では自転車を降りて
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 新学期が始まると、彼女とはまた毎日会えるわけではなくなった。でも、授業や文化祭の準備などで、忙しくしている間に、俺達も学生の本分と落ち着きを取り戻した。彼女は文化祭で2年の後半から3年にかけて描いた絵を美術部の展示に出す予定らしい。俺はと言えば、クラスでやる劇の台本を書かされていた。

 1学期末の話し合いで、俺のクラスは劇をやることに決まった。演目案にはハムレットやリア王、竹取物語などが出ていたが、結局、無難な路線でシンデレラに落ち着いた。もちろんシンデレラは男子生徒がやる。去年のロミオとジュリエットの印象が皆に残っていて、定番劇をあべこべでやりたいという生徒が多かったためだ。

 しかしいざ書いてみると、いろいろ問題があった。シンデレラは、要するに女子の配役が少ないのだ。シンデレラも姉も魔女も、主な登場人物はほとんど女性で、男性はみな端役だ。ということは、舞台に立つのは女装した男子ばかりになってしまう。3年になると、理系に男子クラスができるため、それ以外のクラスは男女がほぼ同数だった。なのに、男子ばかりが舞台に上がるのはどう考えてもアンバランスだ。女装して舞台に立ちたい男子も多くはない。
 結局、シンデレラを男子がやる以外は、女子が女性を男子が男性をやることにして、したたかなシンデレラのぶりっ子描写と舞踏会での王子とかけあいで笑いをとることにした。俺が勝手にそう決めて書いてしまったが、クラスではすんなり脚本が通り、演出はクラスメイトにやらせて、俺は脚本兼総監督に収まった。


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