坂道では自転車を降りて

いつか自然に結ばれる。そんな日がわりとすぐ来るような気がする。
彼女がそう言ったのはいつだったかな。俺達が受験生でなければ、きっと今夜、俺達は結ばれていた。でも、いいんだ。きっと3月にはお互い笑顔で、今した約束を果たすのだから。そう信じて頑張るだけだ。こんな巨大なフラグも、今は全然怖くない。

 俺達は少し寒くなった夜空の下で、身体を寄せ合いながら、灯りの消えて行く教室の窓を背に帰途についた。彼女は本当に穏やかな笑顔で微笑み、俺は彼女の手を握って歩いた。満面の笑顔で笑った彼女は、もう分かっているんだろう。彼女の初恋は人生に一度きりで、相手が俺だという事実は永遠に変わらない。けれど同時に、恋に永遠などないということも。

 卒業、進学、別れと出会い、新しい生活。俺達はまだまだ成長の途中だし、生きている限り人は変わり続ける。その中で、俺達がすれ違い別れる日が来ないとは言えない。けれど、彼女は覚悟したんだ。その日を怖れずに、前を向いて歩こうと。それだけが、2人がずっと一緒にいられる道なのだと。

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