坂道では自転車を降りて

「生駒さん、本当にやったんだ。凄いなぁ。」
「多恵は生駒さんが1人芝居をやるって事前に聞いていたの?」
「ううん。でも、文化祭の時にそういう手もあるね。みたいな話をしたの。私、彼女の脚本を読んで、主役をバラバラにしてしまったことがあったでしょ?」
「ああ、あったね。」

「あれで良かったのかなぁって。演劇部でやるならその方が良かったんだけど。独自の世界観みたいなのがあったから、本当は主演は一人のほうが良かったような気がして。後からなんだけど。」
「言われてみればそうかもな。」
「だから、次は彼女が脚本・演出・主演でやるようなシンプルな脚本を書いてみたらって話したの。去年もクリスマスは2本立てだったし、短い脚本だったら、演劇部の中でそれを実現できるかもしれないと思って。」

「生駒さんはその頃、皆に合わせて部を続けるか、飛び出して自分の好きな事をやるかで悩んでたみたいなんだけど。私は演劇部の中で舞台を分けてもいいんじゃないかと思って。生駒さんが生駒さんのままで演劇部にいられる道を探せないかなって。
 演劇が好きで集まってる仲間なんだから、作る舞台は違っても、意見を言い合ったり手を貸してもらったりできるはずでしょ?
 私は役者の子のことはよく解らないけど、裏方の高橋くんや椎名くんなら頼んだら絶対協力してくれるし、椎名くんが関われば織田くんも動くし、そうなったら裏方全員が手伝ってくれるはずだから、相談してみたらって言ったんだけど。
 言うだけは簡単だけど、本当にやるのは大変だよね。生駒さんも椎名くん達も、すごいなぁ。」

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