坂道では自転車を降りて

顔は笑顔だけどこの口調。既にかなり怒ってるじゃん。やばい。
「いや。いいよ。行こうよ。美術館。」
「本当に?」
「ごめん。ちょっと考え事してて。」
「何を考えてたの。」
「いや、ちょっと。。」
「川村くんの事?」
げ!!気付いてたのか。
「ちがうな。その前から変だった。」
 女って、こういうところが怖ぇよ。普段、あんなに鈍感で察しが悪いのに、なんで今だけこんなに鋭いんだ?

「いやその。今日。」
「今日?」
「君と、その、」
「何?はっきり言って。どうしたいの?」
はっきりはちょっと。。でも、あぁ、どうしよう。怒ってるよ。

「いやその。」
「なに?」
「行かないかな?と思って。」
「さっき言ってたヤツね。どこに行きたいの?ちゃんと言ってくれないとわからないよ。」
 だーっ。ちゃんと言うとか、無理だろ。全然分かってない。分かってないんだ。こいつは、もう。。。なんとしたものか。。

< 867 / 874 >

この作品をシェア

pagetop