甘い恋の賞味期限
 スプーンを渡すと、千紘は待ってましたと言わんばかりの勢いで、プリンを口に運ぶ。

「お味は? ちょっと甘すぎかな」

「美味い!」

 気に入ったらしい千紘は、ばくばくとプリンを食べ進めている。

「それにしても、まだお昼前よ。お父さんは? 仕事なの?」

「仕事は休みだって言ってた。けど、ばあちゃんと一緒に人に会うんだって」

「人に? 君と一緒じゃダメなの?」

「ばあちゃんは、オレが一緒でもいいって言ってたけど、親父はイヤだって。みあい? とか言ってた」

 なるほど、と千世は納得してしまった。会ったこともないが、千紘のお父さんは千紘のお母さんを見つけようとしているわけだ。

「遊びに連れてってくれる、って言ってたのに。親父は嘘つきだ」

「そう言わないであげなさい。君のお父さんは、お母さんを探そうとしてるみたいだし」

「母ちゃん?」

 プリンを食べる手を止め、千紘がこっちを見つめてくる。

「嬉しくないの? お母さんができたら、きっとホットケーキ、毎日のように作ってくれるわよ」

 まぁ、毎日ホットケーキは食べたくないが、千紘と出会うきっかけになったのはホットケーキ。
 そのホットケーキも、お母さんが作ったほうがいいに決まっている。

「……千世は? 千世がオレの母ちゃんになればいいじゃんか」

「…………面白いことを言うわね、君」

 柔らかいプリンを、喉に詰まらせそうになった。面白いと思ったのは本当だが、驚いたのも本当。

「だって、千世と作ったホットケーキ美味かったし。千世がオレの母ちゃんになれば、オレは毎日、美味いものが食べれるだろ」

 名案だ! とでも言いたげだ。
 千世は頬杖をつき、興奮した様子の千紘を呆れたように見つめる。

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