甘い恋の賞味期限
「なぁ、オレの母ちゃんになってくれよ」

「それは無理よ」

 キッパリと断れば、千紘が露骨に不満そうな顔をした。

「なんでだよ」

「答えは簡単。私は君のお父さんと、会ったことないもの」

 知らない相手の奥さんになんて、なりたくない。
 それに何より、千世は今、結婚を望んでいない。
 まぁ、そんなこと5歳児に言っても分からないだろうけど。

「じゃあ、今度は親父連れて来る!」

「え、いいよ。会いたいわけじゃないし」

 前向きに考える千紘に、千世はギョッとする。慌てて提案を却下すれば、、千紘はまた不満そうに口を尖らせた。

「オレの親父、いけめんなんだぜ。写真もあるし」

「いいわよ、見たくない。それより、お昼を食べる前にデザートを食べちゃったわ」

 これじゃあ、お腹の空き具合に余裕がない。食べ終えたボウルを片付けながら、千世はお昼のメニューを考える。

「母さん、何か余ってる?」

「サンドイッチ用のパンなら余ってるわよ。使う?」

 お店に顔を出し、使いかけのパンを受け取る。商店街のパン屋から仕入れているパンは、千世も気に入っている。

「お昼はサンドイッチにしよう。君は……食べるのね」

「おう!」

 千紘は満面の笑みで頷く。台所へ移動すれば、千紘もついてきた。

「なぁなぁ、なんで千世はオレのこと、名前で呼ばないんだ?」

 冷蔵庫の中身を確認する千世に、千紘が気になっていた疑問を投げかける。

「変なとこに気づくわね」

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