甘い恋の賞味期限
「ぱてぃ……?」

「お菓子を作る人のことだ」

「う〜ん……分かんねぇ。けど千世は、お菓子だけじゃなくてご飯も作れるぞ。静子より美味い!」

 千紘の様子から察するに、その千世と言う人は悪い人ではなさそうだ。
 だが、これはどういうことなのだろう?

(こいつが、こんなにも懐くなんて……)

 自分がどれだけの女性と会わせても、懐くどころか、憎まれ口しか叩かない。
 それなのに、その千世と言う人にはこんなにも懐いている。

「なぁ、千紘。千世さんって言うのは、どんな人だ?」

「口うるさい。好き嫌いするなとか、ちゃんと座れとか、色々言ってくる。あとな、今度から千世んトコに行く時は電話しろって言われた。迎えに来てくれるって」

「……本当に、悪い人じゃなさそうだ」

 だが、不安が無くなったわけではない。
 やはり、1度は会っておくべきだろう。

「千紘、今度その千世さんと言う人に俺も会う。いいか?」

「マジか!」

 瞬間、千紘が目をキラキラさせる。

「息子が世話になってるんだ。挨拶くらいするのが、礼儀ってものだ」

「じゃあさ、親父。オレ、母ちゃんになってほしい」

「…………ち、千世さんを、か?」

 千紘が何度も、力強く頷く。

(本当に、懐いてるんだな……)

 お母さんについて言うことはあっても、こんなにも明確なことを言ったのははじめてだ。父親ながら、驚いている。

「なんでそんなに、千世さんが好きなんだ?」

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