甘い恋の賞味期限
 単純かつ、当然な疑問だ。史郎は会ったことがないから、よく分からない。

「会ったのは……2度目? だろ」

「……分かんねぇ。けど、千世と一緒にいるの楽しい。親父がオレに会わせたおんな達とは、全然違ぇし」

 千紘自身にも、分かっていないようだ。……本能的に懐いている?

「そうだ! これ見てみろよ、親父」

「ん〜? ……名前? お前、漢字書けるようになったのか?」

 ひらがなで自分の名前が書けることは知っている。
 だが、漢字を書けるようになっていたとは。思わぬ成長に、父親は素直に喜んでいる。

「千世が教えてくれた。なぁ、すごいだろ。オレと千世の名前、おんなじ字があるんだぜ」

「あぁ……千、な」

 もしかして、これが理由か?
 同じ漢字が名前に入っているから、運命的なものを感じたとか?

「単純な奴……」

 息子の成長に喜んだのも束の間、息子の単純さに今度は泣きそうだ。
 いや、5歳児ってこんなものか?

「なぁなぁ、千世に電話してもいいかな?」

「……不思議だよな」

 嬉々として子ども用スマホを見つめる千紘を、史朗は珍しいものでも見るように見つめる。

(その千世さんって人と関わってから、千紘はよく笑う。それに、よく話すようになった)

 親子としての時間を過ごさねば、と思いつつ、思い通りには行っていなかった。生活のサイクルが違うからすれ違うことは多いし、面倒も家政婦に任せっぱなし。
 それなのに最近、千紘とよく話す。ホットケーキの写真を見せるため、自分が帰って来るまで起きていてくれたこともあった。

「親父、千世とはいつ会う? へーじつは会社で働いてるって言ってたぞ」

「そうだな……明日、は無理だな。来週会おう。手土産も持って」

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