甘い恋の賞味期限
「まぁ……史朗さんも会ったの?」

「昨日会いました。千紘を病院に連れて行ってくれたのは、彼女ですよ」

 冷蔵庫から牛乳を取り出す。今夜は疲れたし、食欲もない。

「そうなの? 私も会って、お礼を言いたいわ」

「もう謝礼を渡しました。お母さんがわざわざ会う必要はありませんよ」

 薫子の表情から察するに、何かを期待している。

「もう寝ます。疲れたので」

「あ、史朗さん……まったくもう」

 せっかく夕食も作ったのに、と薫子は立ち上がってキッチンへ移動する。煮物は嫌いだと言って、千紘もあまり食べなかった。

「それにしても、千世さん、ねぇ」

 薫子は楽しげに笑う。今はちょっかいを出す気はないが、可能性があると分かればどんどんお節介をし始める。
 間宮 薫子とは、そういう母親だ。




*****

 日曜日ーー千世はマンションの前にいた。
 まさか、このマンションに足を踏み入れる日が来ようとは……。
 しかも、そのお宅が専務の家だとは、過去の自分は思いもしないことだろう。

「大丈夫よ…私は千紘に会いにきたのだから」

「千世さん? 何してるんですか?」

 男性の声が聞こえて、千世はものすごい勢いで振り返る。案の定、背後には史朗がいた。

「こ、こんにちは」

「こんにちは」

 史朗は無表情のまま、マンションへ向かって歩き出す。

「来ないんですか?」

「あ、行きますっ」

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