甘い恋の賞味期限
 史朗が動き出すと、千紘もようやく動き出した。

「千世、行こうぜ!」

「引っ張らなくても……行くわよ」

 しかし、少しばかり真剣に考えた方がいいのかもしれない。千紘と友達でいることは構わないが、この先も母親だとか結婚だとかを持ち出されてはたまらない。

(専務……早く結婚すればいいのに)

 そう考えながら、千世はふたりと一緒にスーパーへと向かった。




*****

 間宮邸に戻って来た薫子は、目に見えてウキウキしていた。夫や息子の拓海は、孫の千紘に会えたことが余程嬉しかったのかと思っていたが、どうやら違うようだ。帰ってくると早々に、神戸の藤子さんに電話していたから。

「それでね、史朗さんにもようやくお相手が見つかりそうなのよ」

『この間紹介した、猪寺さんのお嬢さん?』

「それがね、違うみたいなのよ。史朗さんの話だと、うちで働いてる子みたい」

『あら? そうなのね。息子さんは懐いているの?』

「えぇ。毎日のように話してくれるわ。プリンを作ってもらったとか、いろいろ」

 その後1時間近く、薫子は電話で話し続けていた。
 ようやく電話を終えると、待っていたかのように夫が話しかける。

「史朗に恋人でも出来たのか?」

 ムスッとしているが、興味はあるらしい。
 その証拠に、本のページが一向にめくられていない。

「まだ分からないわ。けど、千紘があんなにも懐くなんて、はじめてじゃないかしら? 会ってみたいわぁ、その千世、って人に」

「うちで働いていると言っていたな。本社か?」

「多分、そうよ。苗字はなんて言ったかしら」

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