甘い恋の賞味期限
 千紘は千世としか言わないから、苗字を忘れてしまった。

「ふむ……北村を呼べ。調べさせる」

「まぁ、そこまでしなくても……。今は様子を見ましょう? 私達が干渉しすぎて、史朗は望んでもいない結婚をした挙句、離婚したのよ? そっとしておきましょう。ね?」

「……しかし、あいつに任せておいて大丈夫なのか? 他人には無関心だろう」

 それを言われると、薫子も困ってしまう。薫子が催促しなければ、見合い相手とも会おうとしない。
 けれどやはり、そっとしておくべきだと思う。

「余計なことしないでくださいね?」

「……分かった」

 薫子は、仕事に口出ししない。長年連れ添ってきたが、本当によく出来た妻なのだ。煮物ばかり食卓に上がるのは、少し納得できない部分はあるものの、不満はない。
 そんな妻の頼みだ。聞いておかなければ、いらぬ怒りを買ってしまう。
 勝彦は頷くと、ようやく本のページをめくった。




*****

「できました。どうぞ」

 スーパーから帰ってきて、猛スピードで作り上げたオムライス。卵には生クリームも入れたし、ソースもきちんと作った。自分で言うのもなんだが、いい出来だ。

「美味そう!」

「レストランで出てきそうだな」

 ふたりはオムライスを前に、とても嬉しそうだ。史朗は嬉しいと言うより、驚いているという感じだが。

「千世は食べないのか?」

「私は食べてきてしまったから。スープは飲む?」

「飲む!」

 準備されたのは、コーンスープ。
 それを見た史朗が、首を傾げる。

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