絶対主従関係。-俺様なアイツ-
「……んだよ…」

 比較的人がいない端っこに移動していたあたしたち。

ぽつりとミカドがつぶやいたかと思ったら、ぐいっと再び手首をつかまれる。


「え、ちょっと……!?」

 あたしの制止を振り払うように、来た道を戻りだしたのだ。

突き進むミカドの姿に周りの何人か気づいていたけれど、ピリピリとした雰囲気に怖気づいていたようだ。


「もう充分だろ」

 さっきの思いやりはどこかへ、いつものミカドだ。


 ああ、やっぱりこうなるのか。

とほほ、と肩を落とすも、一目見れただけでも奇跡かもしれない。


「あーっ、帝ったらドコ行ってたんだよ!探したんだからなぁ!」

 できれば誰にも気づかれたくなかったのに、大声でアイツの名前を呼ぶのは……


「…ぜ、禅くん……!」

「…ちょっとォ、愛子ちゃんと一緒?勝負はどうなったワケ?」

 ずずいと詰めてくる禅くんには祈りが通じず、後ろにいたあたしの存在にも気づいてしまう。

 握られた手は汗ばんでいて、すぐ外したかったのだけど、目の前にいる絶対的なアイツはそうはさせてくれず。

妙にドキドキしながらも、こっそり手を隠す。


 そんな禅くんだって十分目を引く容姿を持っているおかげで、周りの視線がどうにも痛い。


耳に入ってくる女の子たちの「なに、あの娘?」「帝様と禅様に近すぎじゃない?」などの言葉は、本当に心苦しい。

あたしは好きで囲まれているわけじゃないのだ。


「……禅、先に戻ってろ」

「ええっ、なんでよ!」

 うざったそうなミカドに禅くんはさらに突っかかる。

さすがに違う意味で騒がしくなる廊下に、慌てて制止にかかった。

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