絶対主従関係。-俺様なアイツ-
「……なんですか…」

 どうにも無愛想になってしまうのは仕様だ。

けど、そんなあたしの態度にも気づかず、ミカドはデスクに向かったままぶつぶつと何か呟いている。


「あの……!」

 無視しているのか、更に声を張ると、鬼のような形相でミカドは振り向いてきた。

「だから、納得できねぇだろ!?」

「え、は、はいっ!」

 切れ長の瞳をさらに吊り上げたミカドとびしっと目が合い、あたしは驚きと緊張で一歩たじろいでしまった。

キレイな顔が怒ると厄介だ。


「お、お茶でも、淹れます……」

 おお怖、と心で呟き、念のためにもってきたティーセットの準備を始める。

すると、先ほどの苛立ちをはき捨てるかのように、ミカドからは大きく息がこぼれた。


「まあ、アレだ。勝負は俺の勝ちだ」

「……そう、ですね」

 あたしの敬語も少しは上達したもんだ。


 悔しいけど結果は結果だし、勝ち目はないことはどこか覚悟もしていたんだ。

なんて、言い訳がましいけれど、あたしは全力でぶつかったつもり。


 ミカドだって一応それなりの身分なわけだから、そんな無理なことまでは言わないだろう。……多分。

熱すぎず冷たすぎない温度にしたハーブティをミカドの座るテーブルに置く。


「けど、俺は腑に落ちない!」

「……はあ?」

 頬杖をついたまま不機嫌な態度を崩さない姿に、あたしは首をかしげた。


「そもそも、なんで俺が優勝じゃないんだ?おかしいだろう。だからといって、お前に負けた気もしないがな」

 何が言いたいのか意図がわからず、あたしはただただぽかんとするだけ。

というか、その自信の根拠を教えてほしいところ。


「よって、勝負は俺の勝ちだが完全勝利ではない」

 ミカドなりのひとつの結論なのだろうか。


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