絶対主従関係。-俺様なアイツ-
 もう来慣れてしまったチョコ色の扉。

そおっと手に掛けると、ベッドの上に倒れていたアイツは勢い良く跳ね起きた。


「…もみ……っ」

「悪かったわね、紅葉さんじゃなくて」


 あたしの顔を見た瞬間、すっと背を向けてくる。

無言を通すアイツの背中は、顔を見るまでもなかった。


「何しに来た……!出てけよっ」


 吐き捨てる言葉は、不思議と怖くなかった。むしろ心配になる。


「ねぇ、言わなくていいのっ? 苦しいのは……、アンタ自身じゃないっ」


 あたしが口にした意味が伝わったのか、ぴくんと肩が揺れる。

アイツ自身も、気づいているんだ。


 アンタは、いつからそうしていたの?

自分の気持ちを抱えて、誰かの想いに遠慮して。


小さなあたしの恋心なんて、比べ物にならないくらいキモチが膨れているんでしょう?


 なのに────


「……うるせぇな!…お前に、何がわかるていうんだよっ」


「わかんないわよっ!」


 反射的に、あたしは叫び返していた。


 いつもみたいに、そうやってあたしを罵倒すればいい。

そんな弱気でワケわかんない顔されるより、よっぽどイイ。


「わかんないわよ……わかんないから、こうして口にするし……」


 ぐっと拳に力をいれ、そっぽを向いたミカドの背後まで歩く。

そして、にわかに震えるような太い首にそっと腕をのばした。



「こうして、触れるの」


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