絶対主従関係。-俺様なアイツ-
 どちらにも声をかけることもできず、あたしは胸の痛みに苦しんだ。


 きゅうきゅう、と。

居心地悪く、けれど根が張ったようにしつこく。



 どうしてこんなに痛むのか、どうして誰かが哀しむのか。

わかるようで、わからない。



 いたたまれなくなったのか、二人から視線を外したアイツはくるりと身体をねじる。

その瞬間、見開いた目とばっちり合ってしまった。


「……お前…っ、いたのか……!」

「…あ、あの……」


 なんて言っていいかわからず、後ずさりをしていた。

眉をしかめたアイツは、足早に俯いたままのあたしを通り過ぎていく。


「ま、待って……!」

「来んなっ!!」


 あたしたちの声に、庭園にいた二人も慌てて振り向いたのが見えた。


 皇さまには会いたかった。

 紅葉さんにどうしてって聞きたい。




 けれど、あたしは──




「…バカ……っ」



 今にも泣きだしそうな表情をひた隠しにした背中を、追い掛けていた。



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