兄妹ものがたり
そのまま発進しそうな勢いでキーを回す先輩に、慌てて自分も助手席に乗り込む。
シートベルトをしっかり締めてホッと一息つくと、後部座席から“かおりさん…”と呟く声が聞こえ思わず振り返る。
幸せそうな顔で寝息を立てる晴人の姿に、小さく笑みをこぼすとゆったりと車が発進した。
スピーカーから流れてくる緩やかな洋楽を聴きながら前に向き直ると、ネオンの輝きは既に後方で、街灯の柔らかい明りに照らされた道を進む。
しばらくそうして無言のドライブが続く中、流れていく景色をぼんやり眺めていると、カチッと微かな音がして車内に炎が揺らめいた。
「お前、煙草平気だったよな」
返事を返す間もなく、口に咥えた煙草にライターで火をつける先輩から、チラリと視線を外して後部座席の晴人を振り返る。
「寝てるから平気だろ」
その視線の意味を察してか、呟いた先輩が窓を半分程開ける。
ゆらゆらと車内を漂っていた煙が、開いた窓の隙間から一斉に外へと流れていく。
“けほっ”と微かに響いた咳のような音には、お互いに気づかないふりで、さりげなく助手席側の窓も開けてみる。