嘘とワンダーランド
京やんの隣に並んでにらみつけているわたしに、
「チャンスじゃね?」
と、言った。

…その言い方に腹が立ったのは、わたしの心が狭いからなんだと信じたい。

「怖いからにらむのはそれくらいにしてくれるか?」

そう言った京やんに、
「何がチャンスですか?」

わたしは聞き返した。

「挽回するチャンスじゃん。

ここのところ、仕事が忙しいとか何とかかんとか言って断ってたんだろ?

風邪ひいてる圭介のお見舞いに行って看病してこいよ。

そうすれば、圭介も若菜にほれ直すんじゃねーか?」

「なるほど…」

京やんの言うことに、わたしは首を縦に振ってうなずいた。

チーンと音がして、エレベーターが止まった。
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