GOLD BOY〜不良彼氏〜



「お母さんのこと好き?って聞くといつも『分かんない』って答えてた。克哉のときもそうだった」



いつのまにか冷蔵庫から野菜を出してきてたお母さんは、野菜を切って料理をし始めていた。



お母さんは真面目な顔で。

冗談を言ってるようには全然見えなくて………私は過去にお母さんに何てひどいことしたんだろうって思った。



きっと親からすれば、自分の子どもが自分のことを好きじゃないなんて、とてもショックなことで。



………私は『嫌い』って言った覚えはないけど、『好き』って言った覚えもない自分に、胸が締め付けられた。



今までお母さんのことは大好きだったけど。

お父さんのことも同じくらい大好きだったけど。

言葉にして2人に伝えた記憶がなかった。



「だからビックリした。美鈴があたしたちを好きって言うなんて思わなかったから」



切った野菜をフライパンに入れて炒め始めたお母さんは、カチッと換気扇のスイッチをいれた。



だから私はフライパンで野菜を炒めてるお母さんに向かって。



………ごめんなさい。



心の中で静かに謝った。

それがせめてもの償い。



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