アクシペクトラム

Likeの意味

私の思考がぽかんと停止する。
かろうじて心臓は動いているようで、どくんどくんと私の胸を打っている。
いま、何て言った…?
白羽くんの口から、好きという発音が聞こえた気がした。
好きってどういう意味だったっけ…
仮にも恋愛小説を書いている身からしたら、女のスカートの砂を手で払いながら言う言葉じゃない。そんな登場人物がいたら真っ先に思うのは、こいつ軽いな、というマイナスなイメージだ。
もしかして、いま白羽くんが言ったのは、そういう女の子がときめくような意味の好きとは違うのではないか。
そう、例えば“ラーメン好き”のように軽く友達同士の会話とかで出てくる感じのやつだ。
そうだ、きっとそっち系の好きだ。
それなら私は何も反応する必要はない。適当に笑い流していれば良い。
ドキドキする必要なんてない。
「あはは、そうなんだぁ…」
白羽くんは変わらずパンパンとスカートを叩く。
当たっているのか、この対応で良かったのか。
「よしっ、これで大丈夫」
「あ、ありがとう」
ほら、白羽くんも特に追及してこない。笑い流しておいて良かった。
「白羽くん、あれ乗ろう」
「え…?あぁ、いいよ」
今度は私が白羽くんの手を引っ張っていく。
絶叫系でも何でもいいや…
「でも、その前になんか食べない?」
ぐいっと手を引き寄せられ、身体が引き止められた。
「カオリさんが食べたいのでいいからさ」
時計を見ると、すっかり午後のおやつの時間になっていた。
そういえば、ドリームランドに着いてから乗り物に乗りっぱなしで、私たちはまだ何も食べていなかった。
「そうだね」
白羽くんを引っ張っていくつもりが、やっぱりまた白羽くんのペースに引っ張られることになる。
でも正直、最初ほど嫌ではなかった―…
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