それでもあなたと結婚したいです。

黒木先生は早速、棚から分厚い資料を取り出してきた。


「これは、泉 千春さんが中学二年生、14歳に初めて受診してから今までのカルテと私が書いた診療記録です。」


「14歳から………こんなに………。」


「恐らく症状はもっと前から出ていたのでしょうが、診察するまでになったのが14歳でした。思春期の頃は特に病状が酷く、特に大人の女性には過剰に反応していました。」


「トラウマっていうんですか?何か切っ掛けになる出来事があったんじゃないんですか?」


分厚いカルテをテーブルに置くと、黒木先生は溜め息をついた。


「それが本人もよく分からないそうで、気がついた時には、既に酷い症状が出ていたそうです。心の疾患を完治させるには最終的にそのトラウマの原因を思い出して、その原因と向き合わなくてはなりません。………ちゃんと向き合って、もう自分は大丈夫なんだと理解しなければいけない。」


「そのトラウマの原因を思い出すってことは相当辛いことじゃないんですか?」


「苦しむでしょう。もしかしたら落ち着いていた症状がぶり返すかも知れません。」


「それなら、無理に思い出す事ないんじゃ……思い出さないで治療は出来ないんですか。思い出さないで、身体だけ……その、……何て言いますか……、元気にってゆうか……。」


< 116 / 436 >

この作品をシェア

pagetop