ときの聲(こえ)
姫と耶介
3日間、私の見た夢が、
戦(いく)さだったり、
戦国時代のコスプレな世界だと、
さすがにプレ中2病の重症なやつに、
かかってしまったかと、
タメ息をついた……。

昨日は、
兄じゃ……と言っても、
乳兄弟の乳母(めのと)の息子という設定の、
若い侍が出てきた。

「……姫!」

私は、夢の内容を思い出していた。

この声は……。

「妾(わらわ)を
置いて出かけるとは、
何ゆえか?」

夢……なのだけれど、

彼女の見聞きしている夢の中の出来事を
私は、真後ろから、
覗いている。

私は、その侍に
ほのかな恋心を抱いているようで、
ちょっと拗ねて言ってみたら、
すっかりお見通しだった……。

「御館様(おやかたさま)の御言いつけゆえ、
行かねばなるまい?
あぁ、そうじゃ、
姫様には、
土産がござった。」

国境近くにある、
神社の紅い御守り袋……。

チリチリーン♪

振ってみたら、
鈴が鳴った♪

「おぉ……、
鈴の音が、
良いの♪」

「お気に召しましたか?」

姫は、頷いた。

「耶介兄じゃ、
そなたのは、
有るのか?」

耶介は頷くと、懐から藍色の御守り袋を
チラッと見せたら、
サッとしまった!

耶介は、人目を気にしていた。

乳兄弟と言うけれど、
御館様の姫様と、
家臣という身分……。

分をわきまえなくてはならない立場だ!

姫様と色違いの御守り袋を持つなど、
もってのほか、

今は妹のような、
姫様なのだが、
いずれは、
隣国に嫁す御方……。


そんな耶介の、
1歩退いたような態度に、
私は、ツンデレ耶介と、
夢の中でツッコミを入れていた!


姫の私には、御守り袋が、
嬉しかったようで、
片時も肌身離さなかった。

ずっと、側に耶介兄じゃがおる……。

これからも……ずっと……そうであって欲しい。

懐の御守り袋を、
着物の上から確かめるように触れて、
いつもつれない耶介兄じゃを婿にとも、
神仏に願っていた!
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