君色ドラマチック
「それは、彼女が決めることだから」
それきり黙ってしまう結城。
「そうですか……。では、もしまたお力になれることがありましたら、ご連絡ください。失礼します」
やっと引き下がった森さん。
って、ここに私がいちゃダメじゃない!
仕事が取られなかったことにホッとする間もなく、ドアが勢いよく開く。
ぶつからないように慌てて避けた私は、運悪く、出てきた森さんと目があってしまった。
「あっ、ごめんなさい……」
彼女の視線が、首から提げた私の社員証に降りていく。
まずい。
「いえいえ」
小さな声で言うと、私は逃げるように、競歩の勢いでその場から逃げようとした。
「あの」
背後から、こつこつと女性らしい細いヒールの音が聞こえる。
心の中で謝りながら、聞こえないフリをした。けれど。
「あの!杉原慧さんですよね?」
廊下の角を曲がったところで、とうとう走ってきた相手に追いつかれてしまった。
「はい……」
社員証を見られてしまったのだから、他人だと誤魔化すこともできない。