君色ドラマチック


「それは、彼女が決めることだから」


それきり黙ってしまう結城。


「そうですか……。では、もしまたお力になれることがありましたら、ご連絡ください。失礼します」


やっと引き下がった森さん。

って、ここに私がいちゃダメじゃない!

仕事が取られなかったことにホッとする間もなく、ドアが勢いよく開く。

ぶつからないように慌てて避けた私は、運悪く、出てきた森さんと目があってしまった。


「あっ、ごめんなさい……」


彼女の視線が、首から提げた私の社員証に降りていく。

まずい。


「いえいえ」


小さな声で言うと、私は逃げるように、競歩の勢いでその場から逃げようとした。


「あの」


背後から、こつこつと女性らしい細いヒールの音が聞こえる。

心の中で謝りながら、聞こえないフリをした。けれど。


「あの!杉原慧さんですよね?」


廊下の角を曲がったところで、とうとう走ってきた相手に追いつかれてしまった。


「はい……」


社員証を見られてしまったのだから、他人だと誤魔化すこともできない。


< 81 / 107 >

この作品をシェア

pagetop