君色ドラマチック


そういえば以前、結城と共通の知り合いの結婚式に一緒に出席したことが一度あったっけ。

式の間は綺麗な花嫁さんに感動して、幸せで楽しい時間を過ごした。

けれど、帰ってきてからひとりの部屋で、なんとも虚しい気持ちになったのを覚えている。

結城は、その結婚式のあとも、まったく心境の変化を感じさせず、相変わらず服のことばかり考えていて。

虚しい気持ちは、音も立てずにそっと、あきらめに変わっていった。


「結婚、かあ……」


私、結城と結婚したかったのかな。

そうなのかと聞かれれば、そうでもなかったような気もする。

って、別れた男のことばかり考えてどうする!


「ちょっと行ってくる」

「はあ?もう夕方よ?どこに行くの」

「友達の結婚式があるから、服を買いに」


背中から『無駄遣いしない方がいいわよ』と声が聞こえたけど、私はささっと準備をして、外に出た。

バッグの中に、招待状の返信はがきを入れて。

もちろん、出席のところに丸をうった。

友人の晴れ舞台だもの、明るい顔でお祝いしてあげなくちゃ。


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