イジワル上司の甘い求愛
「飲みに行くって返事なんてしていないのに……」
なんて強引なんだろう。
資料室で過去の事案を調べながらも、浦島さんとのさっきまでのやり取りが鮮明に思い出されてなかなか集中できずに、口からふいに漏れ出たのは浦島さんに対するボヤキ。
話をしようって、私たちずっと『犬猿の仲』だったじゃん。
今日は頭がぐちゃぐちゃだ。
だけど、さっき見たちょっとだけ疲れた様子の浦島さんの姿を思い出すと、私なんかでも話をすれば、浦島さんだってなんとなく浦島さんも気分が晴れるのかな……。
ううん、私そもそも行くって返事すらしてないし。
あぁ、もう!!
バサバサバサっ―――
あまりにも集中していなかったせいで、私は手に持っていた大量の資料を収めたファイルを盛大に床に落としてしまったのだった。