イジワル上司の甘い求愛
「ごちそうさまでした」
いつの間にか会計を済ませていてくれた浦島さんに店を出てからお礼を伝え、少しだけ後ろをついて歩く。
シャッターが閉まって静まり返っている商店街に、私のヒールの音と浦島さんの靴の音がやけに響く。
浦島さんの突き放した言葉からなんとなくお互い口数が少なくなってしまったせいで、駅までの帰り道も会話が続かない。
明日からまた会社では『犬猿の仲』に戻るんだ。
部署も違うからほとんど社内で見かけることもないから、気まずいままでも関係ないことだけど……
頭の中では、そう思うのに、胸がチクチクと痛む。
会話の糸口を探すけれど、なかなか見つからなくって私は浦島さんの半歩後ろを追いかけるようにして歩くのが精いっぱい。