イジワル上司の甘い求愛
「だけど、もう諦めなきゃね」

空気を変えたくってわざとらしく明るく、無理矢理口角を上げて笑ってみせたら梨沙の方が瞳を潤ませて、傷ついた顔してた。

「梨沙、ひどい顔してる」

視線をあわせたら、私の涙腺が決壊しそうな気がして目を逸らしてふざけて笑う。

「千晶が鈍感すぎて、気が付くのが遅いんだよ」

恨み節にも似た口調で梨沙が鼻を啜りながら口を尖らせる。

分かってるよ、痛いくらい。
泣きだしたいほど、自分の鈍感さと愚かさに後悔してる。


だけど、梨沙が私の代わりに言ってくれて良かった。

一緒に傷ついてくれて助かった。


「今日は、飲もう!!」

梨沙は重たくなった私達の空気を壊すように、声高らかにそう言って空になったワイングラスを高く掲げた。

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