イジワル上司の甘い求愛
「それとも、俺と一緒に帰るのがそんなに嫌か?」
うっすらと眉間に皺を寄せた浦島さんの顔を思わず見上げて、顔をブンブンと左右に振る。
「それなら、一緒に帰ろう。玄関で待ってる」
ようやく片づけを始めた私の姿を確認すると、デスクに置いていたスマホを胸ポケットに直し込み、それだけを言い残し企画部のオフィスを浦島さんは後にする。
一緒に帰りたくないわけじゃない。
2人きりになると、あの日の告白の答えをしなきゃいけないってことが分かっているから。
だけどきっと、ううん、確実に浦島さんは今日私の返事を聞きにやってきたんだ。
梨沙から聞いた『結婚』というキーワードまで思い返されて、私は未だに答えが出てないっていうのに。
私はノロノロとした足取りで玄関へ向かった。