イジワル上司の甘い求愛
本社のビルを出ると、いつの間にか雨が降っていた。

天気予報は晴れだって言ってたのに……。

昼休みに外に出た時もあんなに晴れていたのに。

駅までは少しだけ距離のある道をこうなったら、走るしかない。

そう覚悟していたのに。


「駅まで送る」

スマートに傘を広げて、私を浦島さんの左半分のスペースに入れてくれる。
一瞬、私の腰に手を回して浦島さんの方に引き寄せられたから、私の胸が飛び跳ねる。


思わず浦島さんの横顔を見上げたけれど、きっと浦島さんにとっては無意識の行動なんだろうな。

私だけが意識してしまうなんて、恥ずかしさが湧き上がってくる。

「有瀬さんが風邪ひくとみんなが困る。企画部のみんなが」

相合傘のかたちになってしまったことをきっと浦島さんだって私がそれを断ろうとしていることくらい分かっているらしい。

だから私が口を開くより先に、視線を反らしてそう言ったんだ。


私が断ることが出来ないように。

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