イジワル上司の甘い求愛
「いえ、私は……」

断ろうと思って口を開いた時だった。


グルグルグル――――


2人の間を、雨の音をかき消すように情けない音が通り抜けた。

浦島さんの動きが一瞬、止まる。
私は一気に顔中が熱を帯びる。

フッと浦島さんが表情を綻ばせ、大きな手で顔を覆うようにして肩を大きく小刻みに震わせる。

「オッケーってことだな」

浦島さんは目尻の涙を拭きながら、楽し気に笑いながら駅とは反対方向に進行方向を変えて歩き始めた。

私はというと穴があったら入りたいほど恥ずかしくて、頬を膨らましながら浦島さんに従うほかなかった。


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