イジワル上司の甘い求愛

「これ、この間残業手伝って頂いたお礼です」

「あっ、ありがとう」

手に持っていたコーヒーを可愛げなく突き出すと、少しだけ表情を緩めた浦島さんが受け取ってくれる。

一瞬、触れただけの指先がやけに冷たく感じたというのに離れた瞬間から一気に熱を帯びてくる。

「大丈夫ですか?」

ふいに口をついて出た言葉に私は思わず口を押えた。

「……なにが?」

しらを切ったのか、それとも本当に何のことだか分からなかったのか、少しだけ視線を彷徨わせた浦島さんは一言だけキョトンとした顔をして答えた。


「だっ、大丈夫ならいいですっ。私はお礼渡したかっただけですから!!」

やけにうるさく音を立て始めた胸の鼓動に気が付いて、私は慌てて浦島さんに背を向けて喫煙ルームを出ようとした。
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