なつの色、きみの声。
◇
碧汰に会った日から一週間が過ぎた。
夏休みも終盤に差し掛かり、美衣と計画的に進めたおかげで課題は完璧に終わらせることができた。
最後の一週間はバイトの休みを取っていて、夏休み前から約束していた美衣と出かける予定がある。
必要なものの買い物や準備と、楽しみにしていたのに、出発前から予想外のことが起きている。
「……何、このメンバー」
お盆のあとにシフトが出たから、一週間も休みを取ることに大宮くんが疑問を持つところまではわかる。
ただ、ついて行っていいかと、シフトを調節して大宮くんまでバイトの休みを取ったことには驚いたし、何より、もう一人予定になかった人がこの場にいる。
「どうも、はじめまして。中山です」
一応、美衣には事前に、というかつい先日話をして了承をもらっているけれど、顔を合わせるのははじめて。
中山くんはわたしと会ったときのように全く遠慮する様子はなく美衣に自己紹介をしていた。
電車を待つホームであくびを零す大宮くんに耳打ちをする。
「大宮くん、よく休めたね。店長に何も言われなかった?」
田上さんが受験に備えてシフトを減らしていることもあって、人が足りない日が多いと聞いていた。
そんな中でわたしが休みを取ることでさえ申し訳なかったのに、大宮くんまで休むのは無理があると思っていた。
「お盆のシフト、頼まれて全部出たから駄目だって言い辛かったんだろうな」
「脅したの?」
「人聞き悪いこと言うな。後半は出るよ」
「あ、そうなの? それなら大宮くんは途中で帰っちゃうんだ」
休みが取れたから行く、としか聞いていなかったから、ほんの少し残念な気持ちがあって声に出してしまう。
それを聞いて、大宮くんは少しだけ目を見開いたあと、ふっと口角を上げた。
反応したら負け、直感的にそう思って、大宮くんから目を逸らした。