風変わりなシュガー
その人は市川さんのことをサトと呼んだ。
私とカウンターに並んで座る地元の男達が見ている中、市川さんはスタスタと歩いて行って、懐かしいなと挨拶していた。
私はそこでやっと気がついて、急いで人数分の水とおしぼりを用意する。ここにいる唯一の存在理由なのに、ちゃんと動かなかったら申し訳ない!
だけどそれを無事にライダー達に届け、全員の注文を聞いてカウンターに戻ってくる頃には、市川さんはいつもの優しい雰囲気に戻っていた。あの一瞬、何かいつもと違ったけれど・・・。
今までだって市川さんの友達や知り合いが店に来たことは勿論ある。その時は嬉しそうに元気な声で対応して、私を紹介してくれたりもした。店はもうしめるって言って椅子を持って行って会話に参加していたり。皆で店に泊まっていけよって大声で誘ったり。
だけど―――――――今日きた「久しぶりな人」は、ちょっと違ったみたい。
何だろう。そういえば私、市川さんが苗字や苗字から考えられたあだ名以外で呼ばれるのも初めて聞いたな。サトってどういう名前からの略なんだろう。さとあきとか、さとしとか?さとしなら略さないか・・・ううむ。
だけど5人分の注文をさばいている市川さんにそんなことを聞く余裕はないし、モヤモヤするままで灰皿を運んだりしていた。
カウンターのシュガー達は二人でダラダラと喋っている。時折視線を感じるからまた私のことを話題にしているのかもしれない。・・・ううう、嫌だ。自由恋愛の人とも既婚者とも何を話していいのか判らない。だから出来るだけ、カウンターには近づかないようにしよう。