この思い秘密です
「・・・とりあえずさ・・・歌詞も出来上がって後は
 歌入れでしょ。だから準備が整うまで凪ちゃんだけ一度東京戻ろうか」

何を言うかと思ったら私だけ帰る?

「で・・でも私・・・マネージャーでもあるんですけど・・・」

淳平一人残しておくのは心配だった。

「大丈夫大丈夫、僕もまだ作業が残ってるし、それにただ帰ってもらうわけではないから」

「え?」

「歌入れの前にヴォイトレをしてもらいたいんだ」

「ヴォイトレですか・・・」

「うん。ちゃんとした発声を学んで、それからレコーディングだから。
 もちろん、僕の知り合いで凄くいい先生がいるからその人に凪ちゃんの事は
頼んであるんだ。とりあえず明後日から行ってくれる?」

坂下さんは胸ポケットから一枚の名刺を差し出した。

「・・・はい」

決定事項なら行かなくてはならない。淳平のことも心配だけど

基礎ができてない私にヴォイトレはやっぱり受けておかないと・・・・

「少しぐらい離れた方が沖野くんも凪ちゃんの大切さがわかるはずだから・・・
 東京にいるあいだは自分の事だけ考えてればいいよ。とりあえずは
歌入れに向けてのヴォイトレ・・頑張って」

坂下さんなりの優しさなんだと思った。

私はもらった名刺を握り締めながら笑顔をで頷いた。





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