この思い秘密です
その後も淳平と坂下さんはスタジオでの作業が続いていた。

淳平は寝る以外の時間はスタジオにこもって作業。

私はスタジオ以外の場所で歌詞作りと家事全般

坂下さんも忙しい中時間を作ってスタジオで淳平と打ち合わせをしながら作業を進めていた。

そして坂下さんが来るときは必ず私のスマホに連絡が入る。

だがそのことをスタジオにいる淳平に知らせると

なぜかそっけない返事しか帰ってこない。

しかも忙しいからなのか出来上がった歌詞のチェックは坂下さんにしてもらえと言われる。

嫌だとも言えなず、残りの歌詞は全て坂下さんにチェックしてもらった。



「うん・・うん・・・いいと思うよ。よく頑張った」

「そうですか?・・・よかった~~」

全身の力が抜けるように私はソファーにずるずると腰を下ろした。

アルバムの曲を恋愛小説のようにすると言った時は素敵だと思ったけど

まさかその歌詞の全てを私が書くとは思わなかった。

詞なんて書いたこともなかったから一時はどうなるかと思ったけど

それがやっと終わったかと思うと達成感でいっぱいだった。

だが・・・

「安心するのはまだまだだよ。これから歌入れもあるし、僕こう見えて
 結構厳しいからね」

そうだった・・・私が歌うんだった・・・またも忘れていた。

いい加減自覚を持てって淳平に言われそう。

って・・・最近の淳平は忙しそうなのか何かにイラついているのか

なぜか私を避けているように思えた。

そのことを坂下さんに話すと

「ふ~~ん。沖野くんがね~~」と意味深な表情を浮かべた。

「坂下さん、何か知ってるんですか?」

正直好きな人に避けられるのは辛い。

仕事のことならちゃんと話し合って解決したいし、これから

レコーディングが始まるのにこんなモヤモヤした気持ちじゃ

歌う自信もなくなってしまう。

だが坂下さんはまたもや口角を上げにやりと笑った。
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