強引上司の溺愛トラップ
「どうしたら、したくなるのかな……」

恥ずかしい質問をしている自覚はあった。兄妹でこんな会話をすることが正しいのかも分からない。でも、話を聞いてほしかった。


「……正解なんてないけど、あえて言うなら佐菜がしたい時が正解なんじゃないの。だから、今から佐菜の理想のそういう時を思い浮かべておくとか」

理想か……。千鈴さんにもそう言われたなぁ。でも。


「最近、自分の理想の恋がよく分からなくなってきたよ」

課長に恋している時間は、とても幸せなものだ。
課長のことが大好きだ。
側にいるだけでドキドキするし、触れられるともっとドキドキして苦しくなる。


でも、それが私の理想の恋だったかって聞かれると、それはよく分からない。

理想の恋の相手は、課長じゃなくて一島くんだった。
もちろん、今は一島くんのことは何とも思っていないし、課長のことが大好きだ。これは間違いない。


だけど、課長と出会って、課長を好きになって、課長と付き合うことになってから今までの流れが、全て「理想」とは全然違うものだったから。
今さら、理想を思い浮かべたって、そんなの無駄じゃないかなって思ってしまって。


……だとしたら、私は一生、「したくならない」?
そ、それはどうなんだろう。もしそうだとしたら、いつか課長にフラれてしまうのでは……。


そ、それは嫌!!



被害妄想を思い浮かべてアワアワする私に、神くんは「落ち着け」と言ってくれる。
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