強引上司の溺愛トラップ
電車を降り、駅から家までの少しだけ掛かる道のりを歩いていると、家が見えてきた辺りで課長が、「ちょっと緊張してきた」なんて、珍しく弱音を吐くから、何だか可愛いななんて思ってしまった。


私は特に気楽だった。反対されるとは思っていなかったし、お父さんもお母さんも神くんも、きっと私の理想通り、おめでとう、っていっぱい言ってくれると思っていたから。


けど、玄関の戸を開けて、私はちょっと驚いた。



「あら、優くんに佐菜さん」

「千鈴さん!」

ちょうど玄関前の廊下で、千鈴さんと出くわした。
千鈴さんが神くんに会いにうちに来ることもよくあるからそこまで驚くことでもなかったかもしれないけど、不意打ちだったから。それに、これから結婚の挨拶をする訳だし。千鈴さんがいるとなると……どうしたものか。


とか考えていると、千鈴さんが嬉しそうな顔で、玄関に立ち尽くす私と課長に言った。

「佐菜さんが帰ってくると分かっていれば、もう少し待っていたのだけれど。今日はね、結婚の挨拶に来てたのよ」

えっ?という私と課長の声が重なる。


「ふふ、私、神くんと結婚することになったの。お義父さんもお義母さんもとても喜んでくれたわ。もちろんふたりも、祝福してくれるわよね?」

そう言われ、私は「も、もちろんです!」と返す。
それは確かにおめでたいことだし、私だって嬉しい。
でも、まさかタイミングが重なるとは。
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