強引上司の溺愛トラップ
「酔ってはいますが意識はしっかりしていますし、ちょっと気持ち悪くて歩けないだけです……っ。なので皆さん、先に駅に行っていただいて大丈夫ですっ!」

「いや、でもこんな状況のナベちゃん置いて行けないよ」係長さんがそう言ってくれるけど、


「い、いえ、ほんとに大丈夫です……っ。皆さん、もうすぐ終電ですよね、私はまだ二十分くらい先まで終電は大丈夫なので、先に行ってください……っ」


ああ、ダメだ、皆さんに心配掛けないように平気そうに話さなきゃいけないのに、喋れば喋るほど頭がガンガンしてーー……



本当にその場に倒れそうになったその時。

体がふわっと、後ろから何かに支えられた。




「俺がこいつのこと送ってくから、先行って。方面一緒だし」

私を支えてくれてたのは課長だった。

私を支えてくれる手が、温かい。力が、優しい。



「いいですか、課長?」

「じゃあよろしくお願いします」

皆はそう言って、時計を確認しながら駅へ向かう。


でも、一島くんだけはその場に残り、駅へと向かおうとしない。



「お前もいいから。皆と方面一緒で、終電もなくなるだろ」

「で、でも、渡辺さんこんなふうにしちゃったの俺のせいだし」

と、一島くんが一島くんらしくなく、オロオロしてしまっている。



「あ、あの、違うよ。一島くんのせいじゃないよ、自己管理の出来てなかった自分のせい」

一島くんと飲んでたお酒が美味しすぎてね、とは当然言えなかったけど。



「……本当にすみません。じゃあ、お先に失礼します。今日は、色々お話出来て楽しかったです。また月曜日からお願いします」

一島くんは申し訳なさそうな顔で、でも少し笑って、ペコ、と頭を下げ、私にそう言ってくれた。


私は、その切なげな笑みにすら、ドキッとしてしまった。もちろん、優しい言葉にも。


そして、一島くんは課長にも挨拶をすると、駅の方へも小走りで向かっていった。



「……じゃ、俺たちも向かうか」

「は、はい……」

課長が私の肩をそっと支えてくれる。
私たちの帰る方向は、終電までまだ少し時間があるから、そんなに急がなくて大丈夫。

課長は私に合わせて、ゆっくりと歩いてくれた。
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