強引上司の溺愛トラップ



「すやぁ……」

「寝るのかよ」


電車に乗り込み、シートに座ると、二、三秒で渡辺は寝た。
普通、上司がとなりにいる時にこんなに堂々寝るか?別にいいけど。


金曜日ではあるが、車両はそれなりに空いていた。



「マヌケ面……」

酔って火照った顔に、今にもよだれを出しそうなくらい気持ち良さそうに眠った顔。

こっちにもたれかかってくるんじゃねぇかな、とか思ってたら、車両が揺れたと同時に、渡辺の頭が俺の肩に埋まってきた。


……心の中でガッツポーズした。



このまま駅まで着かなけりゃいいのに、なんて、まるで思春期の恋する少女みたいなことを思った。



……俺は嬉しかった。

人見知りで、いつも人に冷たく接してしまって怖がられてばかりの俺と普通に話してくれたこと。

普通に話して、普通に笑ってくれたこと。


そしてその笑顔が。

長い前髪と分厚い眼鏡の奥から見えたその笑顔が、とてもかわいかった。



……まあ、『兄みたい』とか言われたけど。
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