イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
《10》パーティの夜

菜穂side~

「お帰りなさい」

遅くまで仕事に励む悠真さんを待つだけの毎日にも慣れた。

「只今」

「おやすみなさい。悠真様」

「おやすみ、来亜」


来亜さんはソファに悠真さんのブリーフケースを置くと私に無言で頭を下げて、自室へと入って行った。

「夕食食べますか?」

「要らない。とりあえず水をくれ」

悠真さんはネクタイを外し、疲れたカラダをソファに預ける。


「待ってて、直ぐに用意するわ」


私はウォーターサーバーの水をグラスに注ぎ、悠真さんに差し出した。


悠真さんは疲れたカラダに鞭を打つようにブリーフケースから書類を取り出し、眺めていた。

彼の仕事のコトは全く理解出来ず、隣に腰を下ろして、彼に話掛けれるのを待つ。


「寝ないのか?」

グラスを大理石のローテーブルに置き、空いた手で私の後ろ髪を優しく撫で下ろすが、彼の視線は書類を見ている。その黒い切れ長の瞳で見つめられたくて、ジッと見つめ続けた。
まるで飼い主に構って欲しいと待つ寂しがり屋の猫のようだった。

「一人では寝れないのか?」

悠真さんは私の視線に応えるように見つめ返し、書類をブリーフケースの中に入れた。



< 84 / 235 >

この作品をシェア

pagetop