気になる!
通路にしゃがみ込んでいるその男子生徒から、
…スーッ、
…フゥーッ…
という、ため息にも似た呼吸音が聞こえる。


よく見ると、本を顔に異常なまでに近付けて
いる。
明らかに本を読んでいるのではない。


…まさか…もしかして…


その場で固まっていた美鶴に向かって、その
男子生徒はゆっくりと振り返った。
ばっちり、目が合う。


「…ごっ、」


どうしよう。目が合ってしまった!
焦ったあまり、出てきた言葉が、


「ごゆっくりっ!」


そう叫ぶと、書架の間を縫うようにして走りだしていた。


脱兎の如く、なんてものではない。
こけつまろびつと言った感じの慌てまくった走り方だった。




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