水曜日の片想い


さっきまで橘くん一色だった脳内も、本のことを考え始めたら一気に真面目モードになった。


本って読めば読むほど自分の知識が増えるわけだから、すごく効率がいい。


わたしが本を読んで楽しむたびに知っていることが1つ2つと増えていく。

読書は本当にいいものだ。



さすが橘くんの大好きな本って感じ。



結局、橘くん以外のことを考える時間はほんの数分で終わってしまった。


自分でも引いちゃうくらい橘くん大好きだな、わたし。


「………たち……ばな……」



あぁ、ついに「たちばな」と呼ぶ声まで聞こえてきたよ……。




って、たちばな?


今の幻聴じゃないよね?

確かに誰かの声だったと思うんだけど……。



教室まで鞄を取りに戻ろうと歩いていたが、「たちばな」という言葉が突然校舎裏の辺りから聞こえてきた。



「たちばな」に敏感なわたしは、声の発信源を探しにすぐさま校舎裏へと向かう。


「たちばな」ってたぶんあの橘くんのことだよね?


わりと珍しい名字だし、


もしかしたら橘くんに会えちゃうかもっ!?


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