その嘘に踊れ

唇に笑みを浮かべたまま、アオは人違い疑惑を完全否定した。

そして、自分を見上げる透子の顎を長い指で捉えて持ち上げ、顔を寄せてそっと囁く。


「それに、ね、しーちゃん?
君の外見が平凡だなんて言ったバカは誰なの?
君はとっても綺麗だよ。
確かに一瞬で人目を引き付けるような派手さはないケド、清楚で奥ゆかしい、古典的な美しさを持ってる。
それがとても儚げで、守ってあげたくなると同時に、メチャクチャに奪ってこの透き通る肌を俺色に染めたくもなる…」


なんて素敵なバリトンボイス。
そして、なんて砂吐きそーな口説き文句。

ってコレ、顎クイじゃん。

透子の目が大きく見開かれる。

今度こそ『トゥンク』しちゃうか。
睫毛を伏せて、キス待ち顔とかやっちゃうか。

この、女のコなら誰もが大好物であろうスイーツ(笑)シチュエーションを前に、透子は…

ガっ


「ケペっ!?」


アオの顎を、掌で突き上げた。


「ちょ…
しーちゃん!?危ないよ!?
俺、舌噛んだよ!?」


「あぁ、すみません。
『俺色』というのに、『夏色』と同程度に具体性を見出だせなくて、混乱のあまりつい…」


「いやいやぁぁぁ!?
『つい』のクオリティじゃなかったよネ!?」


うん。
顎クイかーらーのー、掌底打ちて。

彼女はやっぱ侮れない。
胸キュンあるあるに、ことごとく唾を吐きかけやがる。

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