その嘘に踊れ
「…アオ」
「もっかい!」
「アオ」
「もっかい!
お願い!」
「お腹すいた」
ありゃ、打ち止め。
でも、イイよ。
確かに聞いたから。
君の唇が再びその名を紡ぐのを、確かに見たから。
君が、くれた…
「眼球の水分含有量が増した。
まさか、泣く?」
透子の指が、アオに向かってそっと伸びる。
だーかーらぁ。
見透かさないでってば。
「まさかでショ。
お腹がすいて泣いちゃうのは、しーちゃんじゃない?
そー言や、お昼も食いっぱぐれてるもんね。
ナニが食べたい?」
頬に触れた小さな手に自らの手を重ね、アオは幸せそうに微笑んだ。
半分以上姿を隠したアイスブルーの瞳を見据える、全てを飲み込んでしまいそうな黒い瞳。
子供のような態度に油断しちゃダメだ。
彼女は本当に侮れない。
鋭敏な感覚と明瞭な頭脳、ついでに他心通まで装備してンじゃねーかと疑いたくなる、自称『平凡』な危険人物が口を開く…
「ハンバーグ弁当」