その嘘に踊れ

深く息を吐き出して、レイバンを取ってシャツの胸ポケットに仕舞って…


「ただいま」


アオはアイスブルーの瞳が見えなくなるほど目を細めて微笑んだ。

それから、持っていた袋の中から一冊の本を取り出し、透子に手渡す。


「買ってきた。
でも… ほんとにコレでイイの?」


「うん、コレ。
ありがとう」


プレゼントを貰う子供のような仕草で両手を差し伸べ、透子は本を受け取るが…

ねェ、ほんとにほんとに、ソレでイイの?

だってソレ、登場人物がほぼほぼキ○ガイの、鬱しか咲かない夏の本だよ?


「しーちゃんはそーゆー…
ミステリー?みたいのが好きなの?」


アオは透子の手の中の本の、色鮮やかな表表紙を覗き込みながら訊ねた。


「この小説をミステリーと呼ぶかどうかは、私にはわかんないケド。
でも、好き。
高○彬光とか、松○清張とか」


「え?その辺?
東○圭吾とかじゃなくて?
しーちゃんは、ほんとに渋好みだねェ…」


「アオは東○圭吾をよく読むの?」


隣に腰を下ろし、ベッドの縁に背を預けたアオに、今度は透子が問い掛けた。

本音を言えば、大御所の名前をガンガン出すのはやめてほしいでゴザイマス。

はなだが青くなるでゴザイマス。

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