ノイジーマイノリティー


店の入り口は自分の座る席の



後ろ側



レジの向こうだった



ハルを待つ間



色んなことを考えた




まず、今回は珍しく



旅行の雑誌を買わなかった



急に東京に行くことを決めた



ということもあるけど



昨日まで仕事が立て込んでいて



会社とアパートを往復する日々が



続いていた



本屋なんて行ってられなかった



検索すればいいと思っていた



バッテリーの事は全く考えてなかった



そんな事を考えながら



店内を見回す



そして時々入口を見つめる



自分のいた町では



こんなに人はいない



自然と見ず知らずの人とも



話すことがある



でも東京って



人が多すぎて



誰に声をかけていいのか分からなかった



皆自分のことで精一杯みたいで



人のことなんてかまってられない



そんなオーラがみなぎっている



隣に座る人も



外を歩く人も



しばらくすると


ハルに会えるという


ドキドキが襲ってきた



今日は白のノースリーブに


ベージュのサマーセーターだ



そしてレギンス



イヤリングにブレス



可愛いって思ってくれるかな



そんな事を考えている



ハルと一緒にいて



ハルが恥ずかしくないならいい



イヤリングは小さな青い石が


ついている



ブレスはグリーンのガラス玉を



金の台でつなげたもの



光が当たるとキラキラした



そしてリング



ハルがくれたもの



それらを見ていたら



ちょっと元気になる



すると




店の入り口にハルが現れた



黒のシャツを着ていた




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