中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
「轟さん、紫水のこと気に入ってるよ。こっちに引き抜いたのも轟さんって噂立ってるし」
「いやいや、それはないでしょう」
「轟さんバツイチだからなー最近別れたばっかりらしいよ」
史子が私の反応を探るように聞いてもいない情報を与えてきたが、私は軽やかにスルーした。
「へえ、じゃあ今大変な時期だね」
「狙うなら今よ」
「いやいや、こんな小娘相手にしなさそうだよ、轟さんは」
そう笑って返すと、なんだつまんない、と言って、史子はミントティーをぐっと飲み干した。なぜそんなに癖のある飲み物を好んでいるのに、パクチーに対してうるさいのかなぞ極まりない。
「真塩さんはどうだった? イケメンだったでしょ」
不意打ちの真塩という言葉に、私は一瞬咽そうになったが、すぐにアイスティーを飲んで落ち着かせた。
「眩しいくらいイケメンだったよ……」
「だよねー! あー、部屋着とかどんなの着てるんだろ、絶対家でもオシャレだろうな~」
部屋着は高そうなグレーのパーカーですよ、史子氏よ……。
どぎまぎしながら相槌を適当に打っていると、史子は真塩さん語りが止まらなくなり、どんどんヒートアップしていった。
「でも白木さんとこの間ご飯に行ったらしいよ」
「え、そうなの」
少しビックリして、私は思わず反応してしまった。一瞬しまった、と思ったが、史子は幸い興奮していて何も不思議に思わなかったっぽい。
「白木さん本人が言いふらしてたもん、すっごく嬉しそうだったよ」
「ああ、それで今日ご機嫌なんだ……」
「ホテルまで行っちゃったのかなー、ああいうキャピ可愛い子が好きなら私ダメだ中村アン系だもんー」
自分のこと中村アンってしらっと言ったなこいつ……。心の中で白目を剥きながらも、私はそれなりにその事実に動揺していた。
白木さんのことも、あのマンションにあげたのかな……でもそんなこと聞けないし、私は彼女じゃないんだから関係ない。