中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました

……そうか、あんなに避け続けていたし、私から連絡を断ったのだから、当たり前のことだよな。私が轟さんと一緒に食事をしようがしまいが、彼にとってはどうでもいいことなのだ。

自惚れていた自分を、心底恥ずかしく思う。

エレベーターが、編集部の階に着きそうになり、私は開のボタンに指を添えた。
すると、その手に、背後から大きな手が重なった。それは間違いなく真塩さんの綺麗な手で、私の頭のすぐ上に彼の顔があることは、吐息からすぐに分かった。
躓いた時、轟さんとはもっと近くまで接近したはずなのに、それ以上にドキドキしてしまうのはなぜだろう。
彼が近くにいることを感じて、心臓が破裂しそうなほどバクバクと脈打ちだす。
「ま、真塩さん、あの……」
離れてください、と言おうとしたら、顎に指をかけられて、くっと顔を上向かされた。
それから、少し苦しそうな顔をして問いかけられた。

「……あんなメール送ってきたのに、なんでそんな表情すんの?」

……その質問に、私は何も答えられなかった。自分でも今ひどい顔をしていることが、分かっていたから。

真塩さんを完全に意識している困惑した瞳を、彼本人に見られてしまった。

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