婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
私は自分の分のコーヒー代をテーブルに置いて、急いでラウンジを出た。
「えっ…? なつさん 待って下さい!」
後ろで、私を引き止める柚ちゃんの声が聞こえたけれど、私は早く帰らなければという思いでいっぱいだった。
「なつさん 待ってよ!」
エントランスの所で、後ろから誰かに腕を掴まれた。この香水の匂いは、夏樹さんだ…。
その瞬間、圭司の冷たい顔が頭に浮かんだ。
「放して…!」
もう 二度と圭司にあんな顔をされたくない!
私は、泣きながら夏樹さんの手を払いのけた。
「えっ 泣いてる? なつさん 落ち着いて
ねっ?」
そう言って、私のことを抱きしめようとした夏樹さんの頬を、私は思いきり引っ叩たいてしまった。
『パチーン!』という音の後、『イッテー』と頬を押さえながら夏樹さんが顔を歪めた。
私は、ハッと我にかえった。
「ごめんなさい! 夏樹さん…!」
次の瞬間、私は腕を強く引かれて誰かの胸に抱きしめられた。
「いいんだよ…。なつは謝らなくて。今のは正当防衛なんだから。突然 抱きつこうとした夏樹が悪い。」
なつかしい声に顔を上げれば、フッと笑う圭司の顔があった。
「ただいま なつ。いい子にしてたみたいだね…。」
「圭司…。」
なぜここに圭司がいるのかは分からなかったけれど、圭司の温かいぬくもりの中で、私は体を震わせながら泣いた。