Uncontrolled(アンコントロールド)
10年振りの再会から3ヶ月近くが経っていた。
星名の猫舌を含め、そろそろお互いに分かってきたことがある。

朝倉には、現在特定の相手はいないようだということ。
好きな相手ができたら一途に想い続けて交際期間も長いということ。
けれども今は、察するに、決まった相手もいない為、こうして星名とも会うように他の女性とも上手に遊んでいるようだ。
星名以外の女性はともかく、寝るチャンスがない女と何度も会ったり食事をする理由が、果たして朝倉側にあるのだろうかと、ふと疑問に思う。食事代は彼がほとんど出してくれている。これまで星名が支払ったのは、食事の後でカフェに寄ったときだけだ。その時だけ、朝倉はスマートに奢られる。
下心がない相手に対して、男性は投資することができるのだろうか。
楽しい時間としての対価が発生するのであれば、寧ろ星名の方が支払わなくてはならないし、朝倉からそこまでしてもらうほどの価値が自分にあるとは思えない。
そこまで考えると、一つの方程式が思い浮かぶ。
それは、もしかしたら、朝倉は星名のことを……?という、都合の良い乙女チックな発想だ。

路面に面したカウンター席で横並びに座っている朝倉を、夜の街に反射して映るガラス越しにちらりと見る。

意志の強そうな一文字の男らしい眉。奥二重の優しげな大きな瞳。すっと通った高い鼻梁。情の深さを表しているようなふくよかで引き締まった口唇。ワイシャツの襟から伸びる長い首筋。挙げ出したら切りがない。やはり朝倉は、今も昔も、女性にとって自分勝手な夢を見るのにちょうど良い王子様だ。

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